【頭痛・めまい・高血圧に対する治療】 平岡 尚子 先生

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症例)
52歳女性 154.7cm 48kg

主訴)
頭痛・めまい・高血圧

既往歴)
2011年11月から2013年4月まで、頭痛・便秘等にて漢方治療歴あり

現病歴)
2013年晩秋くらいから血圧が高く、頭痛がするようになった。
2014年10月29日、眩暈・吐き気がして、耳鼻咽喉科を受診。メニエル病と診断された。
漢方治療目的にて2014年11月1日当院受診された。
2013年春から柴苓湯と桂枝茯苓丸を婦人科で処方してもらって内服中。

所見)
血圧:155/100 脈拍:83/分(整)
胸部聴診異常なし。
下肢浮腫軽度あり。
腹診:胸脇苦満あり 右下腹部と右臍傍部に圧痛あり 小腹不仁あり
脈:細 弦やや滑 数
舌:淡白暗 歯痕あり 胖 白苔薄やや膩 舌下静脈の怒張なし

問診表)
冷え性 偏頭痛あり 前頭部痛 後頭部痛 頭が重い 耳の奥や鼻の奥が痛い 回転性眩暈 2013年春頃から右耳鳴りあり、気になるが何かしていると忘れる 耳閉感あり 肩が凝る 切れにくい痰・透明な痰あり まぶたがピクピクする 食欲正常 食事と無関係に喉に痞えた感じがする 便秘(やや硬く、コロコロ便、1~2日に1回、出すのが大変) 皮膚干燥 月経周期は遅れる 子宮筋腫あり(φ2~3cm以下のものが3~4個) ストレスあり 夜はよく眠れる 嫌な夢を見る

弁証)
腎陽虚、肝失疏泄(肝陽上亢)、血虚、瘀血

処方)
加味逍遥散5g、釣藤散5g、八味地黄丸5g 3×V
桃核承気湯2.5g、麻子仁丸2.5g 1×Vds
腿内三関穴にお灸をお薦めした。

経過)
1週間後再診。お灸しています。家庭血圧は110~130/80くらいに安定した。眩暈はなく、頭痛もじんわり楽になった。便秘も楽になった。
2015年1月くらいからは家庭血圧110~120/70と安定した。
4月に、脾虚の症状があったため、六君子湯を加えたところ、頭痛再発し血圧も130~140/ まで上昇したため、中止した。

考察)
高血圧症の中医学における弁証分型には、以下のものがある。
・肝陽上亢
・肝腎陰虚
・陰陽両虚
・痰濁内蘊
・瘀血内停
・気血虧虚

今回の症例は、肝陽上亢と腎陽虚が主体だったと思われる。

<肝陽上亢>
臨床症状)
眩暈 頭痛 失眠 多夢 面紅目赤 急躁易怒 頭脹耳鳴 口苦 舌質紅 舌苔黄 脈弦。
処方)
【加味逍遥散】、【天麻釣藤飲】:石決明(4.0) 釣藤・茯苓・桑寄生・杜仲・益母草・夜交藤(各3.0) 黄芩・天麻・牛膝(各2.0) 山梔子(1.0)
【竜胆瀉肝丸】、【杞菊地黄丸】:熟地黄(8.0) 枸杞子(5.0) 山茱萸・山薬(各4.0) 牡丹皮・茯苓・沢瀉・甘菊花(各3.0)

<肝腎陰虚>
臨床症状)
頭暈目弦 耳鳴健忘 腰膝酸軟 咽乾口燥 五心煩熱 口渇少津 視物昏花 舌質干紅 舌苔少or無苔 脈弦細
処方)
【六味地黄丸】:乾地黄(6.0) 山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮(各3.0)
【煉蜜】、【鎮肝熄風湯】:代赭石・牛膝(各10.0) 竜骨・牡蠣・亀板・白芍薬・玄参・天門冬(各5.0) 川楝子・麦芽・茵陳蒿(各2.0) 甘草(1.0)
【棗地帰麻湯】(酸棗仁、生地黄、当帰、天麻、白芍、牡丹皮)、【知柏地黄丸】:知母・黄柏(各9.0) 熟地黄(8.0) 山茱萸・山薬(各4.0) 牡丹皮・茯苓・沢瀉(各3.0)

<陰陽両虚>
臨床症状)
口乾咽燥 五心煩熱 神疲乏力 少気懶言 倦怠嗜睡 夜間多尿 陽痿早泄 舌質淡 舌苔白 脈遅弦細。
処方)
【地黄飲子】:熟地黄・巴戟天・山茱萸・石斛・肉蓯蓉・炮附子・五味子・肉桂・茯苓・麦門冬・菖蒲・遠志(各等分)
【腎気丸】:乾地黄(4.0) 山茱萸・薯蕷(しょよ)・沢瀉・茯苓・牡丹皮(各2.0) 桂枝(1.0) 附子(0.3)

<痰濁内蘊>

臨床症状)
眩暈頭痛 頭脹如蒙 胸脘脹悶 身重体困 肥満 舌質淡 歯痕 舌苔白膩 脈弦滑
処方)
【半夏白朮天麻湯】、【黄耆六君子湯】、【大秦艽湯】

<瘀血内停>
臨床症状)
頭暈頭痛 胸悶不達 痛如針刺 舌質紫or瘀点・瘀斑あり 脈細or渋
処方)
【血府逐瘀湯】、【補陽還五湯】:黄耆(20.0) 桃仁(4.0) 当帰・赤芍・紅花(各3.0) 川芎・地竜(各2.0)
【丹参飲】:丹参(6.0) 檀香・砂仁(各1.0)
【真武湯】
【通竅活血方】

<気血虧虚>
臨床症状)
頭暈目弦 面色白 唇甲不華 心悸 不眠 神疲懶言 舌質淡 脈細弱
処方)
【八珍湯】:人参・白朮・茯苓・当帰・川芎・熟地黄・芍薬(各3.0) 甘草・大棗(各1.5) 乾姜(1.0)
【生脈散】:麦門冬・人参(各6.0) 五味子(3.0)

その他、高血圧の弁証多々あり。

【腿内三関穴】
董師正経奇穴針灸学に記載あり。
三陰交(脾関)と腎関とそれらの中点(肝関)。
主治は肝・脾・腎疾患、生活習慣病、すべての虚証。
直刺1寸。
お灸も可。

福山漢方談話会にて発表

いそだ病院 平岡 尚子 先生